法務デュー・ディリジェンス(法務DD)の進め方

2026
.
7
.
17
|

第1 法務DDとは

法務デュー・ディリジェンス(法務DD)とは、M&Aの実行に先立ち、買主の立場から、対象会社の事業・資産・契約関係等に内在する法的問題点・リスクを調査・分析する手続です。その目的は、単に問題点を列挙することではなく、本取引において留意すべき事項を顕出し、取引の意思決定と契約条件に反映させることにあります。

法務DDで発見された問題は、たとえば次のような形で取引に反映されます。

  • 譲渡価格の減額や支払の一部繰延べ
  • 問題の是正をクロージングの前提条件とすること
  • 株式譲渡契約(SPA)における表明保証・誓約事項(コベナンツ)・特別補償による手当て
  • クロージング後の是正措置(PMI)の計画への織り込み
  • 重大な問題が判明した場合の取引中止の判断

当事務所は、調査の結果をこれらの対応に結び付けるところまでを法務DDの役割と考えております。個々の発見事項について、その重要度と、契約上・実務上の対応策を明確にし、次のアクションに直結する実践的なアドバイスを提供するよう心がけております。

第2 当事務所の法務DDについて

1. 案件の規模や特性に応じた調査

M&Aの規模を問わず、あらゆる事項を網羅的に調査することが費用・期間の面で困難な場合もあります。当事務所は、クライアントと密に連携して重要な課題を選定し、案件の特性やリスクの所在に応じて調査範囲に軽重を付けた設計を行います。調査の対象外とする事項は着手前に明確にし、効率的かつ的確なプロセスを構築いたします。

2. 発見事項を契約上の手当てやPMIに活かす実践的アドバイス

クライアントのご要望に応じて、発見事項を単に列挙するにとどまらず、個々の事項について重要度(高・中・低)を評価することもいたします。その上で、前提条件・表明保証・誓約事項・特別補償といったSPA上の手当ての要否や、クロージング前後いずれの時点で是正すべきかを具体的に示し、DDの結果がそのまま契約交渉とPMIの検討に直結するようサポートいたします。

3. 対象会社の実情を踏まえた柔軟な対応

企業の成長フェーズや事業環境によっては、社内規程が未整備であったり、契約関係が十分に書面化されていないといった事情も珍しくありません。当事務所は、こうした実情を前提に、法令違反の有無とその程度を見極めた上で、取引を止めるべき致命的な問題と、クロージング後の整備で足りる問題とを冷静に仕分けし、実務的な是正の道筋を提示いたします。

4. 適時の情報共有とAIの活用

重要な問題点は、最終報告を待たず、発見の都度または中間報告の機会に共有いたします。また、当事務所では入力データが外部の学習に利用されない、高いセキュリティ水準を満たした生成AIを利用し、お客様の機密情報を厳格に保護しつつ、資料レビューの質を保ちながら期間と費用の合理化を図っております。

5. 他の専門家との連携

税務・財務・会計に関する事項は法務DDの対象外ですが、財務・税務DDを担当する会計士・税理士と連携し、SPAにおける税務関連の表明保証・補償条項の設計等に反映いたします。ご希望に応じて、DD全体の進行管理も承ります。

法務DDの進め方や費用感について、まずはお気軽にご相談ください。
スキーム検討段階での早期のご相談も歓迎いたします。
【お問い合わせ・お見積り依頼はこちら

第3 調査項目

当事務所の法務DDは、概ね次の区分で調査を行いますが、実際の重点項目は、対象会社の事業内容と本取引の目的を踏まえてオーダーメイドで設定いたします。

  • 会社概要: 登記事項、会社組織・機関設計、定款、株主総会・取締役会の議事録類とその運営状況
  • 資本及び株主: 株主構成(株主名簿)、新株予約権その他の潜在株式の有無、株式譲渡制限と本取引に必要な承認手続、株主間契約等
  • 人事・労務: 従業員構成・労働組合・社会保険の加入状況、就業規則その他の社内規程と労使協定の整備状況、労働契約書、労働時間管理と未払割増賃金等の潜在債務、賃金制度、労働災害対応等
  • 資産・負債: 不動産・賃貸借・動産・リース等の主な資産とその契約関係、知的財産権、保険の加入状況、借入金・保証・担保提供等の主な負債
  • 契約関係: 事業の概要・商流の把握、主要な取引先との契約、業務委託先との契約(フリーランス法対応、偽装請負等を含む)、関係会社間の契約、競業避止・チェンジ・オブ・コントロール条項等
  • 許認可・コンプライアンス: 事業に必要な許認可・届出の取得・維持状況、景品表示法・個人情報保護法・フリーランス法その他の業法の遵守状況
  • 訴訟・紛争: 訴訟・紛争・クレームの有無と状況、債権回収・潜在的紛争のおそれ、偶発債務・簿外債務の検討

第4 法務DDの実施方法

1. 資料開示リクエスト・Q&A

クライアントのご担当者を通じて、対象会社に資料の開示と書面によるQ&Aへの回答を依頼いたします。近時は、資料のやり取りには、VDR(バーチャル・データ・ルーム)を利用することが一般的です。売主側でVDRを用意されない場合には、当事務所にて本件専用のオンラインフォルダをご用意することも可能です。

2. マネジメント・インタビュー

開示資料の調査が一通り終了した段階で、対象会社の経営陣・主要人材に対するインタビューを、ウェブ会議または対象会社への往訪により実施し、資料からは読み取れない事情や疑問点を確認いたします。

3. 中間報告・最終報告

依頼者と当事務所のメンバーが参加するウェブ会議により、中間報告会・最終報告会を実施いたします。中間報告では、その時点までに判明した重要な問題点と、追加調査の要否を迅速に共有いたします。

第5 標準的なスケジュール

標準的な案件におけるスケジュールの一例です(キックオフから最終報告まで約1〜2か月)。案件の規模や緊急度に応じて柔軟に調整いたします。

  • キックオフ・初期的な資料開示の依頼  開始〜2週間
  • 開示資料の調査(書面Q&Aの実施)  開始〜1か月(追加開示があれば〜1.5か月)
  • 中間報告 1か月経過時点前後
  • マネジメント・インタビュー  1か月経過時点前後
  • 最終報告  1.5〜2か月以内

「急ぎでDDを実施したい」「予算が決まっている」といったご要望にも柔軟に対応いたします。
【お問い合わせ・お見積り依頼はこちら

第6 成果物(法務DD報告書)

法務DD報告書(中間・最終)を提出いたします。ご要望や案件の性質に合わせて、最適なフォーマットでご報告いたします。

  • 詳細型報告書: 調査項目ごとに事実関係と法的評価を網羅的に整理した報告書。取引後の経営・PMIの基礎資料としても活用いただけます。
  • レッドフラッグ型報告書: 取引の意思決定・条件交渉に影響し得る重要な問題点(レッドフラッグ)に絞り、対応方針と併せて簡潔に報告する形式。スピードやコストを重視する案件に適しております。

第7 費用の目安(モデルケース)

法務DDの費用は、原則としてタイムチャージによりますが、着手前に、調査範囲を踏まえた概算(レンジ)をご提示いたします。

‍  【ケースA】 特定の重要事項に絞ったレッドフラッグ型調査

  対象資料50件程度を想定 = 約100万円〜

  【ケースB】 標準的な範囲のフルスコープ型調査

  対象資料100件〜を想定 = 約200万円〜

費用は主に対象会社の規模(拠点数や事業の複雑さ)、調査範囲の広さ、開示資料の量、スケジュールの要請により変動いたします。ご予算に上限がある場合には、その範囲で最大限の効果を発揮できる調査設計をご提案いたします。

第8 ご依頼までの流れ

1. お問い合わせ

対象会社名(差し支えない範囲で結構です)と案件の概要をお知らせください。利益相反の有無を確認いたします。

2. 初回のご相談

案件の目的・スケジュール・ご予算をお伺いいたします。

3. お見積り・調査範囲のご提案

調査項目・体制・スケジュール・概算費用をご提示し、ご相談の上で確定いたします。

4. 委任契約の締結・キックオフ

資料開示リクエストリストの送付から業務を開始いたします。

第9 よくあるご質問

Q. どの段階で相談すればよいですか。

A. 遅くともDD開始の2〜3週間前を目安にご相談いただけますと、調査範囲の設計や売主側との調整を余裕をもって行うことができます。スキーム検討の段階からのご相談も承ります。

Q. 法務DDのみを依頼することはできますか。

A. 可能です。もっとも、DDの結果をSPAの前提条件・表明保証・特別補償等に反映する作業まで一貫してご依頼いただくことで、DDの成果を最も有効に活用いただけます。

Q. 売主側(セルサイド)の支援も可能ですか。

A. 可能です。売却準備としてのセルフDD(自社の問題点の事前把握・是正)、買主側DDへの対応支援、開示資料の整理等を承ります。

Q. 海外の子会社・取引がある場合はどうなりますか。

A. 日本法以外の外国法に関する事項は当事務所の法務DDの対象外となりますが、必要に応じて、現地の法律事務所と連携して対応いたします。外為法その他のクロスボーダー規制への対応についてもご相談ください。

法務DDに関するご相談・お見積りのご依頼は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

【お問い合わせ・お見積り依頼はこちら