国内のたばこの受注・仕分・配達・代金決済まで、たばこの流通のトータルサービスを行い、国内たばこの流通シェア99.9%を誇るTSネットワーク株式会社。同社の法務チームは、半数が20代というフレッシュなチームです。
今回は、同社の法務チームがどのようにスパークル法律事務所を活用して持続可能な法務体制の構築やチームの全体力の底上げを行っているか、お話を伺いました。
TSネットワークは、コンビニエンスストアや量販店などの国内約20万店のたばこ販売店に対して、製造たばこや喫煙具を流通する物流事業が主な事業です。法務チームは現在6名で、一般法務と呼ばれる各種法律相談への対応や契約審査業務を担っています。その他にも、たばこ税にかかる検討や、反社会的勢力排除の取り組みとして管轄の警察署との関係性を構築する企業防衛系の仕事、社内の個人情報保護委員会の事務局、知的財産周りの業務まで、幅広い業務を対応しています。
メンバー6人中、3人が20代で、若手も活躍しているチームです。日々、いろんなことを吸収して、成長しているので、とても頼もしく思います。他方、人事制度として部署異動がある会社なので、人の入れ替わりが発生しても持続可能な法務体制を構築していくことが課題といえます。
法務の仕事をする上で一定以上の法務の知見や経験はもちろん必要ですが、弁護士レベルの法的知見を有する必要性はないと個人的には考えています。部署異動によって人材が流動的なことや、AIのさらなる発達が予見される中で、専門家レベルの法務知識を身に着けることをゴールにすることが各メンバーのキャリアにとって有用なのかという論点もあります。
法律に関する深い知識よりも、法務という活動を通じた社業への貢献だったり、他部門との調整だったり、プレゼンテーション能力だったり、そうした汎用的な能力を法務の仕事を通じて磨いていってほしいと考えています。
当社では、契約書レビューなどにもリーガルテックを積極的に活用しているので、そうしたツールを活用していく中で、人間はどんな付加価値を出せるのか、と考えたときに、法務としての基礎力を上げるのと同時に、先ほど述べたような汎用的な能力のレベルアップが必要になるのかなと考えました。
法務への相談件数は増えており、相談内容も複雑化しています。また、新規事業に関連して、今まで携わったことのない領域に関する相談も増えてきました。若いメンバーも多い法務チームですが、期待を超えるクオリティでアウトプットを出せるチームを目指したいと考えています。そのためにも、チーム全体の基礎対応力を上げ、短期的ではなく継続的にスキルアップしていける仕組みを作っていきたいという話になり、三谷弁護士に定期勉強会の開催について相談しました。
今年から始めた取り組みなので、まだ数回しか開催していないのですが、民法総論について解説いただいた回や、実際に当社が締結した売買契約書や、実際の事例を使って解説・ディスカッションする回などがありました。外部のセミナーを受講することもありますが、セミナーは一般的な内容を聞くだけになってしまい、なんとなく分かった気になるものの、いざ使う場面になるとうまく応用できないという悩みがあったので、実際に当社で起きていることを題材にディスカッションできるのは実用的で本当の意味で勉強になります。
社会人になると、専門家から勉強を教えてもらう機会はあまり無いので、限られた時間内により多くのことを吸収できるよう、事前課題を出してもらえないかとご相談したところ、快諾いただけました。そういった個別の要望にも応えていただけるのもこの勉強会の良さであり、モチベーションに繋がります。
大学の講義だと何時間もかけて学ぶ量を毎回2時間程度に詰め込んでいるので、メンバーは毎回パンクしそうですが(笑)、みんな意欲的に学んでいますし、ディスカッションも活発に行われています。勉強会だけに留まらず、講義資料をもう1度復習したり、分からなかった箇所をディスカッションしたりする、定着の時間を勉強会の開催後に必ず設けるようにしています。
私は法務チームに所属して4年目になりますが、企業法務の幅の広さを実感しています。また、法務に所属していると新人であっても社内のさまざまな人から相談されることがあります。そうした経験が増えるにつれて、「自分も力になりたい、聞かれたことに対してきちんと回答したい」という意識が芽生えてきました。
勉強会の成果もあり、少しずつではありますが、単純なイエス・ノーだけではなく、事業内容や状況に合わせて、法務チームとしての見解も添えて回答できるようになり、自分も少しは力になれているかなと実感することも増え、法務はやりがいのある仕事だと感じます。
勉強会は、大学のゼミのような雰囲気がありますね。1回2時間しかないので、学べることは限られているかもしれませんが、栗城さんのように勉強会で得た考え方や知識を実際の業務に活かしていく、良い循環が作れていると思います。
スパークル法律事務所には、会社法系や新規事業系の相談をすることが多いです。「どこから手を付ければ良いか分からない」といった事案について相談することも多いです。
三谷弁護士とは昨年から顧問契約を締結していますが、経験が浅いメンバーが多い中で、「なんでも聞いて大丈夫ですよ」と寄り添ってもらえることは、大きな安心感につながっています。また、たばこ業界に関する知見も深いので、一般的な法的アドバイスを超えて、会社としてどうしたいのか、法務チームとしてどうしたいのか、といったところまで寄り添ってアドバイスを頂けます。
たばこという商品の特性上、さまざまな規制や制限があったり、配慮が求められたりする場面も多いので、そうした事情を一からお話しなくとも分かっていただけるのは、ありがたい点です。
たばこ業界というのは特殊性が高い業界ではあると思いますが、特殊性の有無にかかわらず、本質的なアドバイスをするためにはクライアントの事業と、会社のカルチャーを理解することは必須だと考えています。
法的に分析できれば足りるから、事業を知る必要は無いという考え方もあるとは思います。ですが、それでは四角四面なアドバイスしかできず、場合によっては大きくずれた回答をしてしまう恐れもありますし、真の意味でクライアントと信頼関係を構築することは難しいと考えています。
TSネットワークさんのケースでは、ビジネスを理解するために事業所を見学させてもらいました。現場でどんなオペレーションが組まれているかを自分の目で見ることで、問題が生じた時にも事態の把握が容易になりますし、より実態に即したアドバイスができると考えています。
継続的な関係を築くことができるのは、双方にとってメリットがあると考えています。われわれとしては、顧問契約を締結することで相談のハードルがぐっと下がります。弁護士に相談するときには事前準備も必要ですし、心理的にもハードルがあるので、顧問契約を締結したことで気軽に色々なことを聞けるのは、われわれにとって非常に大きなメリットです。
三谷弁護士は仕事をする上で「事業に対する理解」を重視していると仰っていましたが、顧問契約を締結することによって、たばこ業界・物流業界についてより広くアンテナを張っていただけていると思います。
また、三谷弁護士は相談に対して法的解釈や評価だけではなく、それを踏まえて会社が取れる選択肢を示してくれます。画一的ではなく、個別の事案ごとに「事業に対する理解」を踏まえ、さらに一歩踏み込んだ回答をしてもらえるので、法務チームとしても次のアクションを取りやすくなりますし、同時に、我々も社内のステークホルダーと相対するにあたって、経営の意思決定の後押しをするために、より踏み込んで回答する必要があることを、三谷弁護士の回答から学ばせてもらっています。
法務担当者は弁護士にどんなアドバイスを求めているか、という視点は意識しています。現実的に考えて、できること・できないことはありますが、単純に「これダメです」と法務担当者に伝えても、担当者は困ってしまいます。弁護士はその点に想像力を働かせて法務担当者とコミュニケーションを取るべきだと思っていて、そういう意味でも事業に対しての理解を深め、法務担当者が次のアクションを取りやすい回答をするように心がけています。